「よしえさんがよしえさんのままでいれば
 ずっとキャンディのままでいられるはず」(寺澤)

板橋よしえ 寺澤真理

——「TOKYO解放区」は2019年3月で丸6年を迎えます。 板橋 今後はどういった役割を担っていこうと考えてますか?
寺澤 ずっと、悩みが多くて。答えは1個じゃないので、いろんな人に相談もしてて。私のものではないけど、初めからずっと私がやっているので、答えは自分の中にあるのかもと思ってるんですけど、最近、考えているのは、大それたことかもしれないけど、伊勢丹の代表として、「TOKYO解放区」がファッションのいろんな可能性を引っ張り出したり、発信したりする場所になることが、伊勢丹にとってもいいってことになるのかなっていうことですね。「ファッションを発信する」っていうことをただのショップのコンセプトやキャッチコピーだけじゃなくて、本当に体現するには、もっと、縦横無尽にやる必要があるだろうなと思ってます。ファッション業界の人にはここの場所を知ってもらっているけど、世の中の人にTOKYO解放区のことと、ファッションのたのしさをもっと知ってもらうためには、この名前を引っさげて、外にでてくっていうことも面白そうだなって考えてますね。今は「TOKYO解放区」の人格やキャラも出てきた気がするし、キャンディストリッパーとやろうが、アニエス・ベーとやろうが、それがTOKYO解放区だよねって言ってもらえるようにはなったかなと思うので。
板橋 その「TOKYO解放区」らしさ、人となりをもう少し言葉にしてもらえますか? 寺澤さんが大事にしてることって何ですか。
寺澤 まず、トレンド性や話題性、今の時代のキーパーソンであることを含めて、「ファッション」であること。あとは、物理的に婦人服の売り場なので、今のところは、「服」っていう必要がありますね。その上で、モノは並べるけど、モノだけじゃないところをきちんと伝えること。バイヤーっていう役職上、どうしても、商品や品揃えのことだけを言われがちなんですけど、私の中の感覚では、そこに必ず人が伴っている。それは、接客する店頭の子達も含めてですね。彼女たちにきちんと伝えてもらわないと、単なるモノになっちゃうから。そういうところですかね。
板橋 アンテナも幅広いですよね。
寺澤 もともと、ミーハーで、いろんな情報をたくさん仕入れるのは好きだから。仕事だからって頑張って無理して集めてるわけではないんですけど、ここ数年は特に、おんなじチームとか、周りの意見とかも取り入れて、それを企画にしてることもあります。
板橋 うんうん。さらに幅が広がっているんですね。
寺澤 そう、1人でやってるとマンネリ化しちゃうじゃないですか。「時代を切り取る」って言ってるのに私の1つのフィルターだけだと限界もあるので。あと、下の子達のモチベーションアップと育成っていう意味もあって。上から言われたことだけをやってるだけになっちゃうのは、人材としてもチャンスとしてももったいないので、頭を使って、もっと外を見てっていう意識を高めるためにもやってますね。
板橋 大事ですね。
寺澤 アシスタントとか、販売の子とか、店頭の子とか。チームの意見も聞いて。最近はみんながやりたいって言ってる企画を吸い上げて、私のフィルターを通して、変換するようにはしてます。
板橋 似てるところはありますね。キャンディでもショップスタッフや営業の声をすくい上げて、私のフィルターを通して、こういうものをやっていこうって決めることがあって。寺澤さんと同じで、私の世界ではあるんだけど、自分だけになってしまうと視野が狭くなってしまうから。新しいことに挑戦するには、自分が知らなかったことに興味を持ってやってみるっていうことも必要なので、常々、コミュニケーションをとって取り入れるようにしてます。
寺澤 えー、一緒ですね。

板橋よしえ 寺澤真理

——キャンディの未来には? 寺澤 若い世代のデザイナーさんやパタンナーさん、スタッフさんの意見を取り入れつつも、よしえさんがよしえさんのままでいれば、ずっとキャンディのまんまでいられるんじゃないかなって思います。……って言いながら、この言葉も自分にも返ってきてるような感じがします。
板橋 ふふふ。私は自分の好きなものや興味のあるものは、変わらない根本のものがあって。それに対して、好きなもの、興味のあるものがどんどん増えていく感覚なんですけど、寺澤さんも自分の好きな世界があって、そこに、どんどん新しい情報が加わって、気になるものが増えていて。同じように真面目で責任感があるから、「TOKYO解放区」という大事な場所を守るためにどうしていけばいいんだろうっていうのを試行錯誤しながら、常に上を目指しているところに共感していて。寺澤さんの格好良さはいつも見習いたいなと思ってます。負けないじゃないですか。いろいろ辛いことがあっても、やりたいこととビジネスのバランスにどれだけ悩んでも、やっぱり大事なものを守ろうと、自分を貫いていく強さがあって。
寺澤 弱いところもあるんですよ〜(笑)。
板橋 (笑)「頑張って! 負けないで!!」っていう目でいつも見てますから。私もその姿を見て、頑張ろうって。やりたいこととビジネスのバランス、やりたいことをどういう風に社会に落とし込んでいったらいいのか。自分よがりじゃなく、見てくれる人の目線に立って伝えられているかどうか。いつもお手本にしているので、負けないでどんどんステップアップしてください。
寺澤 いやー、結構、負けてますよ(笑)。「TOKYO解放区」は私が担当してるので自己実現ぽく見えるんですけど、私はあくまでも会社から任命された立場として、責任を持って、この場所を全力でやってるだけであって。自分がやってるから自分のことに見えるけど、私はやっぱり、「TOKYO解放区」という場所自体をもっと知ってもらえるといいなって思ってて。だから、これも自分に返ってきそうだけど(笑)、よしえさんは、自分が出ることが苦手で、自分自分になるのは嫌だなって思うのではなく、キャンディストリッパーというブランドを世の中に広めることが、世の中に幸せになる人を増やすことに繋がるんだって考えるようにするといいと思います。楽しい人を増やしてるんだって思った方ががいいと思います。
板橋 はい! 頑張ります(笑)。

てらさわ・まり
伊勢丹新宿店「TOKYO解放区」バイヤー。2013年TOKYO解放区のショップのブランディングから企画立案など、ショップ立ち上げに携わる。現在もバイイングは勿論、企画ディレクションからイベント立案・ブランディング・PR戦略まで手掛け、日々注目のデザイナー&クリエイター・新たなる価値・ファッションの楽しさを提案・発信している。
いたばし・よしえ
1995年、服飾系専門学校在学中に「Candy Stripper」を立ち上げる。1996年、株式会社ミニストリー設立。2017年、Candy Stripper BLACK Collectionをスタート。昨年15周年を迎えたPUFFY 大貫亜美とのブランド「ROMPUS」も不定期に活動中。