Candy Stripper デザイナー板橋よしえ連載「おしえて好きなひと」 第10回 武井咲
「自分で作り上げた大切な世界だから
仕事と育児の両立を頑張りたい」(板橋)
——先ほど、武井さんから「母になってもキャンディを続けていく強さ」という言葉がありましたが、仕事と子育ての両立はどう考えてますか?
板橋 子育てしてると、(子供と)ずっとこのまま一緒にいたいなと思ったりもするよね。
武井 そうそうそう、迷う。
板橋 ね。この仕事がなければ母親業にどっぷり入りたいという気持ちもある。やりたいこと、やってあげたいことはとめどなく出てくるし、そういう生活もあるのかなって思ったりもするけど、私は自分で始めたブランドをやらせてもらえる環境にいて、仲間達がいて、応援してくれているお客様たちがいて。会社を背負っているので、そこは守っていかないといけない。他に変わりがきかない立場ということもあって、出産後すぐに復帰しなければいけない状況だったし、最初は育児とクリエイティブな頭を使う仕事との両立に苦しんだけれど、今は、なんとか楽しんで出来るようになってきたかなって。それはやっぱり、自分ひとりではない、ということが大きい。保育園から呼び出しが来て、急遽お迎えに行かなければいけない、とか、具合が悪そうなので病院に立ち寄らせてもらってから会社へ行ったりとか、いろいろみんなに迷惑をかけてしまうことが多いのだけど、そこを理解してくれる仲間がいたり、サポートしてくれようとする仲間の存在に日々、本当に助けられています。咲ちゃんみたいに、子供とずっと一緒にいられる環境は羨ましく思うよ。特に1日1日成長がめまぐるしい時期だから、いろいろな初めての瞬間を見逃したくないよね。
武井 私は今、限られた時間の中でできることをっていうスタンスでいるんですけど、実際に子供を産んで、お仕事も両立されているよしえさんの話を聞くと、そういうやり方もあるのかなって思ったりもするかな。本当に無知だから、実際に仕事と子育ての両立を果たしている人を間近でみてると、そういう風にやればいいんだっていう発見にもなってて。ずっと一緒にいたいんだけど、それだけじゃないし、仕事も続けたいし……今の悩みどころでもあるから、その話は新鮮に聞ける。
——よしえさんが娘と離れて仕事をしている時間もポジティヴに捉えられるようになったのはどうしてでした?
板橋 保育園に預けた当初は、まだ何もわからない0歳児のときから預けなければいけない状況に、罪悪感を感じることもあったんです。もちろん、預けなければ仕事は出来ないし、待機児童がこれだけ多い中で、保育園が決まったことは本当に奇跡のように有難いこと、そんなことは言ってられる状況でではないんだけど。でも、ポジティヴに考えれば、離れてる時間があるからこそ、逆に集中力が増したり、潔さも生まれたり。その分、会った時にいつもの何倍も可愛がれるなと思って。もちろん1日36時間欲しいくらい時間が足りないけれど(笑)。あとは、娘が保育園で、楽しそうにお友達と遊んでる姿に日々励まされますね。楽しく過ごせているのなら良かったーって。お家だけの世界よりも、世界がぐんと広がるじゃないですか。新しい遊びを発見したり、歌を覚えたり。友達や先生と接することで、心や身体、感覚が発達して、人とのコミュニケーションや社会を学んでくる。最近、2歳になって、やっとお友達を認識出来るようになって。それまでは、同じ空間にいても“一緒に遊ぶ”というより、それぞれで遊ぶっていう感じだったんですけど、最近は「〇〇ちゃんと遊んだ」と教えてくれたり、自分から手を繋ぐことも覚えたりして。思っていることを自分で表現出来るようになってから、ますます良かったな、楽しんでるんだなって。
武井 究極の選択すぎて、選べないですよね。こういうもどかしいまま過ぎてくんだろうなって思ったりしてるかな。
板橋 仕事と育児の両立は、これからもきっと、次々と大変なことが起こると思うけれど、キャンディは自分で作り上げた大切な世界だから、もがきながらも仕事と育児の両立を楽しんで頑張りたい、頑張る。
武井 でも、それはキャンディ好きからすれば嬉しいことですよね。私もその一人だから。世代を超えて愛されているブランドなので、よしえさんが両立に悩みながらもキャンディを続けてくれて、頑張っている努力は絶対に報われているだろうなって私は感じます。
板橋 めちゃめちゃ嬉しい……。ありがとう。