Candy Stripper デザイナー 板橋よしえのおしえて好きなひと 第一回 木村カエラ
「初めての絵本を描いたことで
自然と自分を取り戻せた」(木村)
板橋「その中で絵本『ねむとココロ』が生まれたんだもんね」
木村「そうそう。生まれましたね。ちょうど悩んでた時期だったの。自分が何をしたらいいかわからなくなって、『BOX』(9thALBUM『PUNKY』収録/’16)っていう曲を書いて。どんな時も自分らしくいたいんだけど、なんだか空っぽな感じがしていて。輝く思いがない、自分がどうしていいのかわからない、みたいになって書いた歌詞だったんだけど、ずっと抜け出せないままに絵本の制作に突入したんだよね。だから、絵本も『BOX』をテーマにして描きはじめたんだけど、〈人はこういう絵のほうが見やすいんじゃないか〉って思って、最初は絵具を使って絵を描いたりしたの。もともとはポスカとかのパキッとした色合いが好きなのに、人のことを考えて水彩画で絵を描いてたの。でも、全然納得いかなくて、出版社の方からも『なんかこれって迷ってませんか?』みたいなこと言われて、その瞬間に『BOX』から悩んでたことに対して、〈これだ! 人のこと気にしてるからいけないんだ〉って思って、ポスカで描き直しますって言ってからすごい速さで絵を描いて、止まらなくなっちゃったの、楽しくて。で、想像の世界とか自分の世界にどっぷりハマっていくのが心地良くて心地良くて。そしたら自然と自分を取り戻せていけた。自分が好きなのはこの色、自分が好きなのはこの組み合わせ、っていうのがそれまでわからなくなってたの。でも、それが絵本を描くことによって取り戻せて。で、まさに絵本もそういう物語なんだよね。だから、すべてはこういうことなんだっていうのが自分の中で理解できて。それまでは作品出すのも吐き出す吐き出す、で自分をまわしてたんだよね。でも、混乱した時期があって、それがようやく循環するようになったの、絵本を描いたことによって」
板橋「気持ちが浄化されて、安定して」
木村「そう。〈すごい! 絵本描いてよかった!〉って思って。自分では、もう読みすぎて、いい本なのか悪い本なのかもわからないくらいなんだけどね」
板橋「ずっと夢だったんだもんね」
木村「早く読んでもらいたいな、みんなに見て欲しいなって思えるような絵本になった。絵本を描いてる時も、〈この本を読んで誰かが笑顔になれば! 誰かが救われれば!〉みたいなことを想いながら一心不乱に、楽しくて楽しくて描いてたの。その感覚もすごく久しぶりで、でもそれが結局自分を作ることになって。私は最近になってようやくそれがわかってできるようになって、〈ああ、心地いい!〉ってすごく思う。よしえちゃん、すごいね。いつ見つけたの? そのやり方」
板橋「私は最初、2人でキャンディストリッパーを始めたんだけど、10年目でもう1人の子が違う場所に旅立ってしまった時に、このままキャンディストリッパーを続けるのかどうするのかって悩んで。ずっとおばあちゃんになるまで2人でやろうねって言ってたくらい大事に思っていた相方がいなくなっちゃって、どうしようってなった時に、周りのスタッフが、『私たちが相方になります。一緒にやりましょう。頑張りましょう』って言ってくれたので、〈ああ、この人たちのために頑張ろう〉って思えて。2人が着たいもの、かわいいものを作る、という物づくりから、仲間を思ったり、周りの人を思ったりする物づくりに変わっていったんだと思う。その時くらいからかな」
木村「へえ〜。それってけっこうぽっかり穴が空いちゃうよね」
板橋「うん。でも、今は必要なことだったんだなって思える」
木村「うんうん、すべてがね。起きることは本当にすべてが必要なことなんだなって。最近私もよく思う。つらいことも、ね」
板橋「きっとそれが与えられた課題で。それがクリアできなかったらブランドも継続できてなかったかもしれないし、カエラちゃんにも会えてなかったかもしれないから、本当にありがたいなって」
木村「そうだね。それは私も最近すごく思う。全部が全部つながってるっていうか、運命っていうものがすごく面白く目に見えるようになってくるっていうか。〈お、これ来たな? 問題起きてるな?〉みたいな(笑)」
板橋「その瞬間は嫌だけどね(笑)。でも、なんか意味があるんだなって思えると頑張れるよね」
木村「頑張れる。前はそういうふうに思えなかったけどね。やだなって思ったらやだな、だし、ついてないって感じだったけど、今はそうじゃない」
板橋「後々わかるよね。意味があったんだって。全部意味があった!って」
木村「そう、だから今ここにいるんだ!みたいな。レベルアップする感じっていうか。それがすごく重要なことなんだなっていうのは最近、思う。だから、新しいこと……絵本が大好きすぎるから、怖くてなかなか挑戦できなかったりしたんだけど挑戦してみたら、やっぱり意味があって、自分が取り戻せた。すごく次につながっていくし、また音楽をやる時にも生きてくるなって」
板橋「うん、そうだね。生かされるよね」
木村「そうそう。だからすごくやってよかったなって思った」