Candy Stripper デザイナー板橋よしえ連載「おしえて好きなひと」 第8回 夢眠ねむ
「勇気のある決断は寂しいけれども、
潔くてねむちゃんらしいと思う」(板橋)
——卒業だけじゃなく、引退後は、自身がプロデュースするキャラクター「たぬきゅん」のプロデュースと実店舗の書店を開店することを目標に活動することも同時に発表しましたよね。 夢眠 いろんな人にも「こんなにセカンドキャリアを準備してスライドするアイドルいないよね」って言われましたね(笑)。今までも社長になったり、ブランドを始めたり、女優になった方もたくさんいると思うんですよ。ただ、私は辞めるまでの道のりを楽しくみんなに見せたいっていうのがあって。悲しませはしちゃうけども、〈悲しい〉と〈卒業〉の間を〈楽しい〉で埋めたいっていうのがずっとあって。作品を残していくのも、イベントをしていくのも、クリスマスのアドベントカレンダーみたいにしたいなって思って。終わっちゃうのは寂しいけど、最後の1日をめくるのも楽しみ! みたいな。
板橋 そういう気遣いがちゃんと出来るところ! ねむちゃんて素敵なんだよね。いつも、ファンのことを大切に考えているし、丁寧に自分の言葉で伝えようとしている。そんな、真摯な姿勢がとても素敵。ねむちゃんはわたしより年下なのに、包容力があって、頼り甲斐のある存在。いつも手のひらの上で転がされてる気がするもん(笑)。わたしが男子だったら嫁にしたいくらい! 頭の回転が早くて、トークも上手くて、プロデューサー的な資質も兼ね備えてて……ねむちゃんみたいな言葉選びのセンスのある人に憧れる!
夢眠 口数が多すぎるのも良くないことだと思うんですけど(笑)、性格は直せないから。おしゃべりしすぎちゃうんですけど、ちゃんと聞いてくれた人は、その先も楽しみにしてくれたり、一緒の場所に生きてることを感じてくれていて。「秘密は後で言うからね!」みたいな感じで、あんまり内緒のことをないようにしてて。それを感じてくれてるのは嬉しい。
板橋 勇気のある決断はとっても寂しいけれど、潔くてねむちゃんらしくて、素晴らしいなと思う。今後はどうなっていくの?
夢眠 今は本拠地をアイドルという職業にしてるんですけど、今後は書店にしていこうとしていて。あと、たぬきゅんっていうキャラクターのプロデュース。本屋さんとキャラクターグッズのお店みたいな感じでやりたくて。アイドルっていろいろとやらせていただくことも多かったんですけど、自分で決めて、楽しいことができる人たちと悪ふざけがしたいなと思ってて。そういう場所を作りたいなって。
板橋 いろんな選択肢がある中で、どうして本屋さんをやろうと思ったの?
夢眠 もともと、本ならなんでも買ってもらえるお家で、本には親しんでて。初めてやったバイトも本屋さんだったんですよ。で、でんぱ組の夢眠ねむの活動の中で、日販さんで〈夢眠書店開店日記〉っていう連載を3年くらいやっていて。「私はいつか書店をやりたいから、そのために出版社さんや編集部、作家さんとか、自分が好きなところに取材に行く」っていうのがコンセプトだったの。本や雑誌って売れなくなっているし、ファッション雑誌もどんどんなくなっちゃってるけど、私はどうしても好きだったものがなくなっていくのが辛くって。本やCDや服って、良くも悪くも、本当に好きな人にしか届かなくなってる。でも、なんとか、嫌いって言う人は減らしたいなと思ってて。読むのが怖いみたいな人も結構いるんだよね。自分も運動が苦手だから、人の苦手をあんまり否定できないけど、本に触れるきっかけを失っているなと思って。そういう、自分が大好きな本に触れるきっかけの場所を作りたいなと思ったのが最初ですかね。その連載をしていく中で、試しに本屋さんの一角を借りて、〈夢眠書店〉をやったことはあるんですけど、それだと意味がないなと思って。棚だけだとただのセレクトになっちゃうし、私のファンが、私が好きな本を買うだけで終わっちゃっていて。ありがたいけど、ちょっと違う。ただの“本屋さんごっこ”でしかないなと思って。どうせやるなら、ごっこじゃないことをやりたいと思ってきたから、アイドルも真剣にやったし。本気でやらないと良くないなと思って。
板橋 わたしも小さい頃から本をたくさん買ってもらっていたな。その影響もあってか、今も本が大好き。だから、どんどん本屋さんが無くなっていくのが寂しくて。その一方でデジタル化が進んでいるから仕方ないのかな……と思っていたところに、ねむちゃんが本屋さんをやると! すごく嬉しかったし、すごく楽しみ。ねむちゃんにしか出来ないオリジナリティあふれる書店になりそうだね。ちなみに、夢眠書店にはどんなものが並ぶの?
夢眠 一応、新刊ベース。でも、古本もセレクトしてやりたいなと思ってて。資料探しに来てもらえたら嬉しいし、よしえさんとか、好きな人がセレクトした棚も作りたい。本って、その人のセンスに触れられるし、一番恥ずかしいところだなと思ってて。そういうのもやりたいし、フリマのようなイベントもできたらいいなって。
板橋 面白そう! 実際やるとなったらめちゃくちゃ悩みそうだけど(笑)、ぜひとも参加してみたいな。でんぱ組としての9年間の経験は、今後どのように生かされていくと思う?
夢眠 難しいんですけど……なんだろうな。自分が楽しいと思ってる場を作って、そこで楽しんでもらえるっていう自信はついたというか。一人でじーっと絵を描いてるだけだと、何が伝わって、何が響いて、どういうことが人を幸せにできるかって、いまいちピンときてなかった。でも、人前に立って、いろんなことをしていく中で、自分が幸せだったら、その幸せが伝わるし、悲しい時に和らげてあげられる経験もしてきた。そういうのが、ちょっと立ち寄れる場所であったらいいなっていうのは、なんとなく、考えてて。アイドルに会いに行ったら幸せになれる、そのお店版ができたらいいな。なんか足りない時に来て、補填して帰れる場所になるといいな。