「直感を大事にするっていうことと、
すぐに実行したことが今につながってる」(板橋)

板橋よしえ 渡邉直子

——先ほど、商売という話がありましたが、渡邉さんの職業は「お花屋さん」ですか? アーティストではない?
渡邉 お花屋さんです! アーティストという言い方は私には合ってないと思ってます。
板橋 花屋を職業にしようと思ったのはなんでなの?
渡邉 正直なことを言うと、私、英語しか得意分野がなかったんですよ。学校もあまり好きじゃなくて。「起立」「礼」とか、みんなで同じ時間に給食を食べるとか、そういうのが本当に苦痛だったんですよ。そんな中、家に帰ると、外国の人が住んでいたり、うちで英会話教室をやっていたりして。
板橋 なんで家にそんなに外国の人がいたの?
渡邉 お父さんが若い頃にアメリカ人に助けられたことがあったみたいで、まだ学校の先生になり得ない子達をおうちに3〜4人ホームステイさせて、うちで英会話教室をやってたんですよ。だから、家に帰ると楽しいことがあったし、異文化には日常的に触れていて。あと、お洋服お好きだったので、日本の着物の本を翻訳するお仕事みたいなのがいいかなと思ってたんですね。でも、大学3年生の時にすごい好きな男の子と歩いているときに、お花屋さんがあって。なんとなく「お花屋さんいいな」って言ったら、「すごく似合うからやった方がいい」って言われて。それでお花屋さんに。
板橋 へえー!!!!! そうだったんだ! そこから何を始めたの?
渡邉 正直、花とかどうでもよかったし、「え?」って思ったんですけど、ちょっとやってみようかなと思って、2週間後にはお花屋さんで働いてましたね。大学生のバイトから始めて。やり出したら、「あ、いいかも」って。
板橋 なるほど。進路を悩んでる人には1つのアドバイスになるね。直感を大事にするっていうことと、すぐに実行するっていうのがよかったっていうことだよね。
渡邉 そうです。自分の直感しか頼りにしてない。ぐずぐず考えても、いいものは生み出せないんですよ、私みたいなタイプは。直感命です。
板橋 私もそう。それでやってみて、間違っていたら、次に行こうって。気にしてたら生きていけないと思う。同じ失敗を繰り返さないためにも反省はしないといけないけど、気に病むことはない。
渡邉 私も仕事はクヨクヨしないです。プライベートはクヨクヨしてますけど(笑)。

板橋よしえ 渡邉直子


板橋 (笑)お花屋さんをやってみて、どんなところが楽しかったの?
渡邉 季節とか、渡す人やもらう人。全部がいつも総がわりするから、飽きない感じがあって。板橋さんにオーダーしてもらっても、あげる人によって、毎回、変わるじゃないですか。飽きっぽい私の性格を刺激してきたんだと思います。それに、人が喜ぶもの、ただ見るだけの、ただの贅沢品を作るのってってすごく楽しいんですよね。あとは、昔から色彩が好きなんですよね。
板橋 直ちゃんの世界観ってどこで育まれたんだと思う? 色彩感覚とか、異素材を組み合わせたりとか。既成概念に囚われない独特の世界観は、他にないと思うんだけど、そこのルーツってなんだろね。
渡邉 えー。なんなんでしょう。ちなみに板橋さんはあるんですか?
板橋 私は小さい頃から見てきたものが影響してると思う。小さい時は、魔法とか、妖精とか、サンリオだとキキララとか、キティちゃんが大好きで。サンリオショップでお買い物をすると小さなマスコットをつけてくれるんだけど、毎回違うプレゼントにワクワクして。見に行くだけでも楽しかったし、とにかくいろいろな文房具を集めてた。そういったキャラクターたちのそれぞれの世界観や色使い、サンリオで経験したワクワクさせてくれる気持ちとかが、自分の中のルーツかなと思う。
渡邉 それをいうと、私は「グリム童話」だと思う。ちょっとだけ悲しげで、ちょっとだけ残酷で、いちゃいけない色と色が混じってるんですよね。不協和音みたいな感じが、すごく好きでした。極端な例ですけど、頑張ったけど、死んじゃった話とか。悲しい話の過程の中に、独特の濁りがあって、そこに少しだけ綺麗なものが浮き上がってる。その綺麗なものは目に見えてるものじゃなくて、心の中で咲いてるものだったりする。その、不調感、ぴったりこない感じが好きかもしれないです。
板橋 ただ可愛いだけじゃないのが好きなんだよね。
渡邉 毒みたいなものが好きかもしれない。
板橋 そこに共感します。私もただ可愛いだけだと飽きてしまうし。どこかちょっと崩したくて。
渡邉 そうですよね。癖みたいなもんなんです。キャンディストリッパー自体も平和な世界に、いい意味でちょっとだけ舌を出していて。そういう世界観がすごく好き。だから、人が泣いてるときに笑っちゃうような感情というか、どこか違和感のある、変な感じが好きかもしれないです。
板橋 それが直ちゃんの色彩感覚に生きてくるんだね。
渡邉 ただ綺麗なだけではなく、見心地が悪いもの同士を合わせたくなるんですよね。