Candy Stripper デザイナー板橋よしえ連載「おしえて好きなひと」 第15回 渡邉直子

「私自身というよりは関わってくれる人が大事。
〈てん.〉を守ることが私の使命だと思ってる」(渡邉)

板橋よしえ 渡邉直子


板橋 あと、直ちゃんの、決して折れない気持ちの強さの秘密も知りたい。
渡邉 あはははは。折れてます!
板橋 やったるぞ! っていうパワフルさをいつも感じるんだよね。
渡邉 なんだろ。……これは、答えになってないかもしれないけど、小学生の時に、毎日、日課のように通っていた駄菓子屋があって。ある日、おばちゃんが、「これ、新商品なんだよ」って、糸がついたカラフルな飴を出してきたんですよ。その飴の赤が見たこともないくらい綺麗だったんですね。その飴は、結局は食べちゃうんだけど、3日間は見てたくらい綺麗だったんですよ。そういう気持ちを大事にしたいと思ってます。自分の中に、守らないといけない1ミリくらいの……随分削れて1ミリくらいになっちゃったけど、その1ミリの気持ちを守らないと生きてる意味がない! って思ってるんだと思う。
板橋 そういう風に感じることが出来るって、物作りをする上で大事なことだよね。
渡邉 この綺麗な赤色はなめたらなくなっちゃうんだなっていう、ちょっとだけの尊さ。あとは、さっきの花屋になったきっかけですけど、その彼のことを忘れられないんだっていうふうに捉える人もいると思うんですけど、全然そんなことはなくて。彼に言われて、花屋になろうと思った。その時の自分の気持ちが大事なんです。その、芯の部分が1個2個集まってる感じが大事というか。
板橋 もうちょっと、直ちゃんの芯の強さを紐解きたい感じがするな。
渡邉 それは、私自身というよりかは、やっぱり、人じゃないですか。「てん.」を一緒にやってる相方の尾林さんとか、スタッフとか、友達とか。「てん.」を盛り上げてくれた人たちへの感謝がありすぎて、やめないこと以外、方法がない。もちろん、「やめたいな……」って思うことはあるけど、そこで、「やめる!」にならないのは、ここを守るのが自分の仕事だと思っているし、自分が頑張ることでスタッフや友達が喜んでくれてるのだったら貫くぞっていう気持ちだから。自分の中にあるっていうよりは、人から助けてもらったことが忘れられないっていうだけだと思います。
板橋 それは同じかもしれない。最初は、自分が洋服を作りたい、自分の世界を知ってもらいたいとか、他にはないものを見せたいっていう気持ちで始めたけど、人が喜んでくれる姿を見ると、だんだんともっと喜んでもらいたいなっていう気持ちになるし、私もキャンディストリッパーのスタッフや友達、お客様への気持ちが原動力になってるから。
渡邉 それは私、板橋さんからいつも感じてます。自分がやりたくないことも、もしかしたらあるかもしれない。私が勝手に後ろに垣間見えたとしても、それは全部、キャンディストリッパーを守っていくっていう1個の理由しかない。それは、違う世界を生きていてもわかることですね。
板橋 すごく嬉しい。
渡邉 私も同じ気持ちです。誰に使命されてるわけでもないんだけど(笑)、「てん.」を守るのは私しかいないって。それは板橋さんから感じてます、いつも。自分自分ではやっていけないんですよね、やっぱり。
板橋 そうなの。ブランドを立ち上げたのは自分だし、世界観を作るのも守るのも自分なんだけど、自由に自分のやりたいことだけをやってきた時代を経て、今はたくさんの仲間たちに囲まれている。いろんな価値観の人がいる中で自分の世界を作り、守ることは簡単なことではないけれど、みんなを巻き込み、服への想いや人への想い、いろいろ育てていきながら、みんなでキャンディストリッパーを作りあげている感じ。
渡邉 そこが、カメラマンさんやスタイリストさん、ヘアメイクさんとは違うところかもしれない。私たちは「屋号」があって、自分自身といっていいんだけど、自分とは違うところで育ててるものがあるから。自分の世界とはまたちょっと違くても、そこを守って、育てていこうっていう気持ちですよね。
板橋 そうそう。 ——最後に渡邉さんが今後のキャンディストリッパーや板橋よしえの未来に望むものを聞かせてください。
渡邉 えー、全然変わらないでいて欲しいだけです。板橋さんが大事にしたいものをずっと守って欲しいだけです。もしも、その守るものに対して、私たちでお花で力になれることがあったら、お花の面では任せてくれっていう感じです。
板橋 直ちゃんは本当にセンスがいいし、いつも夢を運んでくれる。誰にでもできることじゃない。スペシャルな職業だと思う。これからも豊かな想像力で、たくさんの色彩に溢れた世界を作り続けてほしいです。
渡邉 頑張りまっす!

渡邉直子(わたなべ・なおこ)
神楽坂の花屋「てん.」のデコレーター。〈てん.〉主宰 尾林健一とデコレーター渡邉直子による神楽坂の花屋。贈り物のお花、撮影のプロップや、ウィンドウディスプレイ、ウェディングの装花など多方面で活動中。グリム童話に出てきそうな花屋さんらしくお花の色彩を活かし、時には異素材を組み合わる独自の世界観で、ファッション業界や著名人、近所の小学生などファンは多数。
板橋よしえ(いたばし・よしえ)
1995年、服飾系専門学校在学中に「Candy Stripper」を立ち上げる。1996年、株式会社ミニストリー設立。2017年、Candy Stripper BLACK Collectionをスタート。PUFFY 大貫亜美とのブランド「ROMPUS」も不定期に活動中。