SEARCH

Candy Stripper デザイナー板橋よしえ連載「おしえて好きなひと」 第11回 吉岡里帆

「17歳の時に出会った演劇の
 エネルギーに惚れ惚れしちゃって」(吉岡)

板橋よしえ 武井咲

——吉岡さんが最初に洋服に興味を持った時期からお伺いできますか? 
吉岡 うちの母親は昔、ブティックで働いていて。お洋服が好きすぎて、家の中が本当にクローゼットだらけなんですよ。だから、物心ついた時から服には興味があったんですけど、私が母の洋服を着たいっていっても着せてもらえなくて。隠れて何回か着たことがあるんですけど、バレてめちゃ怒られて。それくらいお洋服を大事にしてて。年相応の服はいろいろ買ってくれてて着てたんですけど、母親の着てる服を着てみたいじゃないですか。  でも、ずっと、「お母さんが大事にしてる服は着ちゃダメ」って言ってた母が、東京に行く時に、ごそっとくれたんです。「今の里帆ちゃんなら、このお洋服を大事にしてくれる気がする」って。母に託された服を見た時に、本当に大事にしてたんだなって感じて。今でもコートやワンピースを大事に着てますね。
板橋 いい話……! お母さんのクローゼット、気になる(笑)。でも、そんなにお洋服好きなお母さんの元で育ちながら、洋服関係ではなく、演技の方に行ったのはどうしてだったんだろう。
吉岡 確かにそうですね。身長が小さいのでモデルになろうと思ったことは全然ないし、お洋服は好きだけど、遠い憧れの世界というか。
板橋 見てるもの、着るものっていう感じだったのかな?
吉岡 そうですね。お芝居の方は、やりたいことはこれだなってすんなり思えたんですよね。
板橋 里帆ちゃんが女優になりたいと思ったきっかけは?
吉岡 私は小学生の時から歌舞伎とか能とかを、親が見せてくれてて。そもそも物語が大好きだったんですね。空想の世界に入る瞬間、劇場で幕が開く瞬間が一番幸せな瞬間で。自分が今いる世界とは違う場所に連れていかれる、夢の世界に入っていく感覚が本当に大好きでたまらなくて。本を開ける瞬間もそう。ずっと物語に入っていく空想をしてました。自分がこの本の世界に入ったらこんな風に生活するなとか。そういう物思いによく耽っていて。だから、小さい時からいろんな演劇を見てたんですけど、17歳の時に学生演劇に出会って。自分と歳がほぼ同じ子たちが、汗を流しながらお芝居をしてる姿がエネルギーの塊に見えて。同じ人間に見えなかったんですよね。その子達はなんの見返りもなく演じてる。そのエネルギーに惚れ惚れしちゃって。こういう友達が欲しいと思った。この子たちと友達になりたいって思ったのが始まりですね。お芝居をしたいっていうより、こういう友達と人生を歩んでいけたら楽しいだろうなと思って、仲良くなりたいって思って、ずっと通っているうちにどんどん好きになって。一緒に演じたい、一緒にあの舞台に立ちたいと思ったのが最初ですね。
板橋 小さな頃から歌舞伎や能を見る環境だったというのも、小学生ですでにその世界を楽しめていたというのも凄い!

板橋よしえ 武井咲


吉岡 私はずっと関西の小劇場にいたので、プロデビューして、仕事がうまくいきだすのは、他の子達より遅い方なんです。だから、映画の雑誌とか見て、同年代の子たちが活躍しているのを羨ましく見てた記憶もまだ新しいですもん。
板橋 その後、京都から東京に上京して来たんだよね。
吉岡 上京後は本当に下積みっていう感じでした。夢を追いかけてるので無我夢中で、今振り返ってみると、一瞬だったなって思いますけど、10代から20代前半の5年間は宝物だなって思っていて。東京に出てきて、私は新宿のジャズバーでアルバイトをしてて。そこで、シェイカーを振って。
板橋 えっ! 里帆ちゃんカクテルとか作れるの? 意外すぎる!
吉岡 いや、めっちゃ下手くそで(笑)。常連のお客さんに「本当にまずい」って言われて。だから、私はあんまり作らせてもらえなかったんですけど、そこで、常連の人とかに「なんでここで働いてるの?」って聞かれて。「私、役者になりたいんですよね」っていうと、みんな笑うんですよ。「無理無理。どんだけ多くの人がなりたいと思ってると思ってるの」って。「こんなところにいないでまともな生活をしな。OLさんになって、結婚して、子供を産んだ方が幸せだよ」って、よく言われてたんですけど。信じてもらえないから燃えてて。絶対に大丈夫! こんなに強くスクリーンの中に入りたいと思っている人はいないはずだ! くらいに思ってたので。その時からずっと「小さいことから1つずつ」って唱えてましたね。