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Candy Stripper デザイナー板橋よしえ連載「おしえて好きなひと」 第11回 吉岡里帆

「自分が作る服は絶対かわいいっていう自信があって。
 成功しか考えてなかったんですよね」(板橋)

板橋 絶対に女優として活躍する! という里帆ちゃんの覚悟が伝わってくるね。そしていまや押しも押されぬ、最も注目される女優さんに。
吉岡 本当に私、めっちゃ小さいことからコツコツやってきたっていうことだけは自信があって。可能性を信じてくれた人の期待に応え続けるっていうことと、自分の利益をあんまり考えないようにすること。考えたくなるんですけど、そうじゃなくて、目の前にある仕事を、誰がやるよりも一番いい形で見せるっていうことだけを思って仕事をしていたら、本当にわらしべ長者みたいにどんどん仕事が増えていったんですよね。私もキャンディさんの初めての話が聞きたいです。初めてお洋服を作った時とか、作ろうと思い立った時の話。

板橋よしえ 吉岡里帆


板橋 私は、東京の洋裁学校に通っていた母の影響もあって、小さい頃から絵を描いたり、自分で洋服をコーディネートすることが大好きで。高校2年生の頃、進路を決める際に、みんなが大学に進むから、なんとなく大学に行こうかなって思っていたんだけど、具体的に学科のことを調べていくと大学にそんなに興味が持てなくて。自分が好きなものは何だろう? ってあらためて考えたとき、ノートに、欲しい! とか、かわいい! と思った洋服を雑誌から切り取ってスクラップしたり、着たい服の絵を描いたり、四六時中、洋服のことを考えているかも……と気付いて。そこから漠然と洋服に関わる何かがしたいなって思ったの。(服飾の)専門学校のセミナーに参加して、高校では自分は浮いていたんだけど、そこでは同じ価値観で話が出来る、夢を語り合える友達がたくさん出来て、楽しくて嬉しくて。週末は埼玉から原宿に通って、歩行者天国でゲリラファッションショーに参加したり、原宿の文化屋雑貨店というお店でアルバイトを始めたり……。でも、まさか自分がデザイナーになれるとは本当に思ってなかったなあ。
吉岡 すごいですよね。本当に一握りの人しかデザイナーにはなれないし。しかも、その服が時代にピッタリはまって、みんなが着たいって思うところまで持っていけるって。尊敬しかないです。絶対に私の服は伝わるっていう瞬間はありましたか? 手応えみたいな。
板橋 ブランドを始めた10代の頃は、自分の作る服は絶対にかわいいっていう、底知れぬ自信があって。他にはないものを作るんだ! っていう意気込みだけは凄かった気がする。失敗するかもっていうビジョンは全くなくて、もう、成功することしか考えてなかった。
吉岡 カッコいい! 絶対に成功するに違いないっていう。
板橋 専門学校2年生のときに仲間とブランドを立ち上げて、デビューファッションショーをして。いろいろな雑誌にブランドの特集が組まれたりして、洋服はたくさん掲載されているのに、どこにも売っていないという状態が続いていて。仲間の家をアトリエとしていて、学校から帰ると留守電にいろんなショップの方から、卸をさせてもらえませんか? という問い合わせがたくさん入ってたの。でも、卸って? 掛け率って? というくらいよくわかっていなかったから、どうして良いかわからずそのままに放置してしまっていて(笑)。まだインターネットがない時代だったので、自分たちで手作りでカタログを作って、お客様から電話でオーダーをしてもらってました。その後、いくつかの原宿のセレクトショップにブランドマップと作った洋服を持って卸をお願いしに1軒1軒プレゼンしに行って。でも、どこも全てのラインナップは置けないと。今考えれば、当たり前のことを言われているんだけど、自分たちのブランドは全て置いてもらえないと伝わらない! という変なこだわりがあって。そんな中、私たちの想いに共感してくれたセレクトショップの方に卸をしてもらえることになって。その頃は1点1点手作りだったので、たくさんの量は作れなかったんだけど、定期的に納品しに通っていました。
吉岡 一着一着、手縫いしてたんですか?
板橋 そうなの。 最初は二人で始めたんだけど、だんだんと私たちも手伝いたい! って言ってくれる仲間たちが増えていって、最終的には7人くらいになってたかな。それぞれ就職したり、バイトしながら、趣味でキャンディを続けていこうと、毎週、仕事が終わったあとに新宿のミスタードーナツに集まっては「じゃあ、わたしこの服を縫ってくるね」とか「この服のパターンをやってきます」とか、どんなものを、いつまでに作るのか、物作りの進行の打ち合わせと撮影やリースの状況を報告してました。
吉岡 青春ですねー。もろ「Paradise Kiss」じゃないですか! 私、矢沢あいさんの「パラキス」とその前の「ご近所物語」が大好きなんですよ。

板橋よしえ 吉岡里帆


板橋 当時、「ご近所物語」の担当の方から取材を受けたことがあるよ! 専門学校の子がブランドを作っていくストーリーなんですが、是非お話を聞かせてくださいって。
吉岡 矢沢先生、きっと影響を受けてますよね。「ご近所物語」の実果子ちゃんが作るポップでキャッチーなお洋服は、キャンディさんの作るものからインスパイアーされてるところもありそう!
板橋 そうだったらとても光栄だなあ〜。わたしも矢沢あい先生の作品大好き! 実際はどうかわからないけれど、キャンディストリッパーが出来るまでを編集部の方に取材されたことは覚えてる。
吉岡 私は大喜びで夢見心地で読んでた一人です。この世界に入れたらって妄想しましたよ。私はどっちかというとパラキスに出てくるゆかり(早坂紫)ちゃんに近くて。前髪が短いのがオシャレっていうのがよくわからないみたいな感じで、堅物の高校に通ってるから、校則が厳しくて黒髮でっていう。私は京都に住んでたので、地方から見た東京の子たちってどんどん先端を走ってて。こんな感じで制服を着崩すの? とか思ってました。
板橋 あははは。
吉岡 そのあとのお洋服の広まり方はどうでした?
板橋 洋服のリースや、TVや雑誌・新聞の取材がどんどん増えていって、こんなに求められているのなら、誰かが生みだしたものよりも、自分たちが作ったものに人生をかけてもいいんじゃないか、と。とはいえ資金がないので、自分たちにお金を貸してくれるスポンサーの方を探して。 ご縁あって、2千万円をお借りして、1千万円で株式会社を作って、残りの1千万円で事務所を借りたり、物作りの資金にして。
吉岡 おいくつの時ですか?
板橋 19歳でブランドを立ち上げて、20歳のときに会社を設立しました。
吉岡 めっちゃ早いですよね。
板橋 今だったら、そのお金をどうやって返済したらいいんだろう? って考えちゃうけど、その時は、失敗するはずがないって思ってるから、何も心配してなかった。若さゆえの勢いがありました。