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Candy Stripper デザイナー板橋よしえ連載「おしえて好きなひと」 第11回 吉岡里帆

「好きなものを作ることは絶対にブレたくない。
 かわいいと思ったものしか作らない」(板橋)

——夢を仕事にした二人ですが、今はご自身の仕事をどう捉えてますか?
吉岡 私は今でもめっちゃ夢見心地で仕事をしてます。だって、好きなものだらけなので。「うわ、あの監督だ。あの洋服だ」って。私、この仕事をさせてもらえることに、毎朝、お祈りしたいくらい感謝してて。毎晩、寝るときは、次の日、何か途轍もない不幸が訪れて、この仕事ができなくなる可能性があるって感じながら寝るようにしてて。明日もこの仕事ができたらいいなって、毎晩、思ってる。だから、何かあって、急にこの仕事ができなくなって、またバイトをする生活に戻るっていうシュミレーションは毎日してます。生きていくためにそんな予防線を張ってるくらい特別な仕事ですね。だから、当たり前だと感じたことがないし、毎回、奇跡って思ってます。

板橋よしえ 吉岡里帆


板橋 里帆ちゃんは、毎日目にしない日がないほど人気者なのにも関わらず、決して浮足立つことなく、とっても謙虚! 里帆ちゃんの骨太な心意気や自分を厳しく律するストイックさは本当に凄い。日々、感謝の気持ちを大事に出来る里帆ちゃんは素敵だと思う。話を聞いていて、あらためて、今物作りさせてもらえている環境にもっと感謝の気持ちを持たねば、と思わされたよ。
吉岡 でも、ずっと半年先のシーズンを追わないといけないじゃないですか。誰よりも先に出し続けなきゃいけない職業じゃないですか。苦しくなったりしませんか? もう描けない! 産まれない! とか。
板橋 あはははは。苦しいよー! 24年ずっと走っている感じというか……。ふと1ヶ月くらいゆっくり休んでみたい……! と思うこともあるけれど(笑)、やっぱり自分が好きで始めたことだから、苦しい〜!ってもがきながらも、これからも走り続けるんだろうなって。今まで、描けない!って悩むことはほとんどなかったんだけど、子供を出産して、ガラリと自分の生活リズムが変わってしまってからは、考えたり、想像する時間が限られるようになってしまって、とても大変! 前よりもインプットの時間が減ってしまったことが悩みだよ。とはいえ、自分が見て聞いて感じたものが発想に繋がっていくから、スケジュールを駆使してライブや観劇、展覧会に足を運んだり、睡眠時間を削って、小説や漫画、映画を見るようにしてる。限られた時間の中でも、出来る限りいろんなものを見たいし、いろんな人と会っておしゃべりしたいなって。
吉岡 わかります! めっちゃ共感します。1日の時間って想像以上に少ないですよね。
板橋 ねー、ほんとに! 里帆ちゃんはどうやってインプットの時間を作ってるの?
吉岡 夜更かしする。あははははは! 1日1つだけでもいいから、好きって思うものを見ようって決めてます。
板橋 それってとても大事なことだよね。毎日の積み重ねが、あとで生きてくるというか。
吉岡 私、自分が考えられる許容範囲ってすごい狭いんだなって痛感してるんですよ。だからこそ、生き方や考え方を作品から学んでる。次の日には全然違う自分になれることもあるし、嫌だった自分から脱出できるかもしれないヒントが作品に溢れていることもあるから。洋服も、その人の人生そのものだって思うんですよね。キャンディさんが好きだって思ったものも凝縮体だから、それはもう、エネルギーが出ちゃってるなって思う。
板橋 それが伝わっているなら、本当に嬉しい。誰でも作れるものなのであれば、自分がやる意味が無いのかなって思っていて。ちゃんとそこに作り手の想いが詰まった服をわたしは作り続けたい。好きなものを作るっていうことに、絶対ブレないでいようと思っていて。なんとなくの気持ちで作ったものは1つもなくて、全部、ちゃんとかわいいと思ったものしか作らないっていうのは大事にしていること。想いのある服はちゃんと受け取ってくれた方に伝わると思っているから。里帆ちゃんが女優として大事にしてることって何だろう?
吉岡 自分の中では大きくわけて2種類あるなと思っていて。1つは、やっぱり、疲れて帰ってきてテレビをつけた人や、たまのお休みに映画館に行った人に楽しんでもらって、ちょっとだけ肩の力が抜ける、心が緩むような、優しい気持ちになれるような仕事をしていくこと。幸せな気持ちになってもらえるかもしれないものを選んでいく、笑えるものを選んでいく。プラスのエネルギーになるものを選ぶって言うこと。もう1つは、本当は言いたいし、助けを求めてるし、心の奥底で叫んでる人たちの言いたいけど言えないことを代弁できるような仕事。それがめっちゃ醍醐味だと思ってます。楽しいだけでは、本当に苦しんでる人のところに届かないこともあるし。だから、代弁できてるかもしれないと思ったら、絶対にやるようにしてます。ただ、今日、キャンディさんの服を着てて、自分で言うのも恥ずかしいけど、ちょっと可愛い女の子になれた気がする! って思ったんですよ。
板橋 えーー!

板橋よしえ 吉岡里帆


吉岡 そう言う気持ちになれる服なんですよ。凛々しくなれる服もあれば、リラックスできる服もある中で、キャンディさんの服は幸せな気持ちになるかも。明るくてハッピーな自分がどんどん出てくる。それが私が感じるキャンディさんらしさかなって思います。
板橋 嬉しい……!
吉岡 こういう服を着て街に出たら、出る作品とかやりたいことも変わるかもって思いました。私は人情のある話とか、等身大の役をしていきたいなって思ってたけど、もっとエンタメに寄ってもいいんじゃないかって。さっきキャンディさんの服を着てて、もっと楽しんでもらうっていうことに、重きをおいてもいいんじゃないかって思って。今までは代弁するっていう方に重きをおいてて。だから、「なんでその仕事選ぶの?」って言ってくる人もいたけど、自分ではやる意味を感じてやってきてたんですね。でも、もしかしたらこれからは、楽しんでもらうための努力をするべき年代なのかな? とさえ、考えさせられたました。この服を着たことで!
板橋 すごい! そんなことまで考えていたとは!
吉岡 そのくらい変われそう。いい意味で変われる服ですね。
板橋 里帆ちゃんはいろんな服が似合うよね。シンプルもモードも、女性らしい服もボーイッシュな服も、今日みたいなちょっとポップな洋服も! もっといろいろな里帆ちゃんを見てみたいな。また何か一緒にやりたい! それにしても、こんなに話し足りないなと思う対談は初めてだよ。
吉岡 ぜひぜひ! 私もキャンディさんに聞きたいことがまだあるんですよ。節目節目で作るお洋服は変わりますか? とか。
板橋 じゃあ、その話は今度会った時にしよう!

よしおか・りほ
1993年1月15日生まれ。京都府出身。主な近作に主演ドラマ「きみが心に棲みついた」(2018年)、映画「音量を上げろタコ! なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」(2018年)など。ヒロインを務めた映画「パラレルワールド・ラブストーリー」が5月31日に公開。
いたばし・よしえ
1995年、服飾系専門学校在学中に「Candy Stripper」を立ち上げる。1996年、株式会社ミニストリー設立。2017年、Candy Stripper BLACK Collectionをスタート。昨年15周年を迎えたPUFFY 大貫亜美とのブランド「ROMPUS」も不定期に活動中。