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Candy Stripper デザイナー板橋よしえ連載「おしえて好きなひと」 第13回 TAKURO

「GLAYのメンバーとして、他の3人に
恥ずかしくない自分でいたかった」(TAKURO)

板橋よしえ TAKURO

——(笑)お互いに新しいことも始めてますよね。TAKUROさんは2016年12月に1stソロアルバム『Journey without a map』をリリースし、今年の2月には第2弾も発表しました。
TAKURO それはね、35歳くらいの時に自分のギターの下手さにうんざりして嫌になっちゃって。
板橋 TAKUROくんが!?
TAKURO そう。だから、まず、楽器屋さんに行って、「明日から弾けるブルース」とか、「地獄のテクニカルフレーズ100」とか、「速弾きが上手くなる方法」とかを買って。1ページ目からやっていったら、いかに自分が基礎というものを怠けていたかに気づかされて。あらゆるエンターテインメントを見渡してみても、下手な30代っていないんだよね。20代は人気者でいいんだよ。30代前半まではカッコいい/カワイイだけでもいいかもしれないけど、30代中盤に舞台を観に行った時に、40歳をすぎて下手な女優さんなんて一人もいないな、これはヤベーなって気付いて。
板橋 確かに。
TAKURO カッコいいとか、カワイイっていう、つかみどころのない評価は、若さの特権だなって思う。だから、35歳にして、自分のギターのフレーズ1つ1つを見直すようになって。その時に、親友であるB’zの松本さんに今やってることを話したら、「じゃあ、ソロアルバム作ればいいじゃない」って言われて。「いつか作りたいですね」って答えたら、「作る気があるなら、今、やりなよ」って返されて。実際に自分が個人的に好きだったジャズやブルースの世界に飛び込んだら、そこは才能の宝庫だったし、テクニカルなことや理論を理解する勉強にもなって。それも全部、GLAYに返したかっただけだからね。GLAYのメンバーとして、他の3人に恥ずかしくない自分であるために、自分には足りないものがたくさんあったっていう。
板橋 幅が広がった?
TAKURO GLAYの彩りも増したと思う。それに、相方のHISASHIがギターのフレーズで困っている時に、「こういうアプローチもあるんじゃない?」って言えるようになった。それは、今までの自分はできなかったこと。GLAYをもっと活性化させたいっていう。もっとGLAYを楽しくするためにって感じで始めたことかな。
板橋 そこまでキャリアがありながら、一回自分を見つめ直して、また一から勉強してみようって思うことがすごいと思う。そこに飛び込む勇気も尊敬する。
TAKURO ほんとに切羽詰まったら人間やるんじゃないかな。35くらいの時に、ほんとに愕然としたもんね。TERUはどんどん歌が上手くなっていくし、HISASHIは幅を広げていって、JIROもTHE PREDATORSを含めて、色々と頑張っていく中で、俺はGLAYを作った人という揺るぎないものがあるとしても、作ったからなんだっていう話で。今を生きていかなきゃいけないなって。
板橋 でも、はたから見るとそんな必要ないって思っちゃうようなTAKUROくんでさえも、そうやって、また基礎からやり直してることに勇気をもらうっていうか。
TAKURO みんなもそうだと思うけど、自分のずるさとか甘えは自分が一番知ってるじゃん。周りに対しては取り繕うことはできるよね。でも、自分が今、ずるいことを考えたとか、一番知ってるのは自分だから。簡単なことでいうと、ジムワークをやってて、ちょっと楽してるなとかさ。それはトレーナーさんにもわからない程度のことかもしれないけど、自分だけがわかる人間の弱さが我慢ならない。そこに慣れちゃうと、せっかく輝きだしたGLAYを鈍らせる。GLAYが東京に出て、メジャーデビューのきっかけをつかんで、今尚、夢を持って進んでいるのであれば、自分の弱さで足を引っ張りたくない。そこはすごい悩んだよね。そしたら、ギターの道も奥深くて……。松本さんと一緒にロスでレコーディングしたんだけど、辛すぎて。俺、死ぬ間際に思い出すのはあの日々だと思う(笑)。

 

——(笑)どんなレコーディングだったんですか?
TAKURO 精神的にも技術的にも追い詰められたし。自分の弱さや情けなさが全部、目の前に並んでるの。
板橋 今の自分を突きつけられる、みたいな。
TAKURO その前に立ちはだかる、山のような自分というものの……人間一番難しいのは、自分自身に対して正直であるとか、向き合うことだよね。やっぱり、人は見たいものしか見ないし、聞きたいことしか聞かないから。見たくないものを見続けるっていうのはしんどいよ。でも、人生、いいところどりはできないよね。多分、人間の精神は、たやすく楽な方に逃げてしまうから。10いいことがあったら、10嫌なことを引き受けようって、常に思ってる。
板橋 うーーー。TAKUROくん凄いなーー。ちょうどレコーディングして日本に帰ってきていたTAKUROくんと会った時、すごい弱った状態を包み隠さずわたしと旦那に見せてくれたときがあって。その時、もし自分だったらどうかな? って考えたんだけど、大人になって打ちのめされることってなかなかない。それでも自分を成長させるために自分の弱さと向き合い、新たな目標を立て、挑み、進むTAKUROくんの姿はちょうど新たなところへ進もうともがいていた自分の姿と重なってみえた。TAKUROくんだってこんなに落ち込むことがあるんだと。だったら自分はまだまだ頑張らなきゃダメじゃないかって背中を押してもらえたし、あらためて、やっぱりTAKUROくんはすごいって思ったんだよね。
TAKURO いま、話してても、思い出して、オエってなる。
板橋 あはははは。